芝居を始めてはや40年以上。この間に数えきれないほど、多くの舞台を経験できている。役者を志すものとして幸せなことだと思う。しかし、自分の芝居に満足したことはただの一度もない。観客の皆さんや観に来てくれた友人、知り合いの多くから「よかったよ! 面白かった」等々ありがたい評価をいただいたことも一度ならずある。しかしいつも思うのは、自分は誤魔化せないということ。40年もやってきて下手だなあ、もっとこういう風に作れないのかったのかなあ?など後悔の念が振り切れない。役者仲間とよく話すのだが、この感覚は舞台に立つ者であれば誰でも感じることがあるようで、そういう時いつも考えるのは、千秋楽が終わって撤収作業をしつつ、あるいは打ち上げのビールで乾杯しているとき、「これが稽古最終日で、あと1週間後に舞台が始まるんならいいなあ」ということ。
つまり、公演が終わってほとんどその瞬間に、数か月向き合ってきた芝居の方向が見えてきたりするのだ。そして残念ながらそれは、終わってしまった舞台の上では表現できなかったこと。商業演劇と違って、我々の舞台の多くは同じ作品を時と場所を変えて再演することはあまりない。なので、この感覚はもしかすると永遠に叶うことのないリベンジマッチなのかもしれない。ところがこの見果てぬ夢、つまり千秋楽のさらに1週間先に公演初日を迎える、というほとんど空想みたいなことが実現する。というのは来月10月22~23日(土日)に予定する公演は、実は7月に予定されていたもの。それが、公演まで2週間ほどとなった時点で、公演関係者のコロナ陽性が発覚して急遽中止のやむなきになったのだ。ところが劇場からは、本来の公演の3か月先なら空きがあって7月のキャンセルは発生せずにそのまま横スライドで日程変更だけで公演が打てるとの通知。これはもう、日程変更でチャレンジするっきゃないでしょう。役者、関係者一同ほとんど即決で順延公演を目指すこととなった。7月末の舞台を目指して作り上げてきた芝居だから、役者の中ではまだ温まっている。そんなホカホカと湯気の立つ芝居をさらに2カ月半ほどかけてじっくり熟成できるのだ。公演中止となった時点では、皆意気消沈がっかりだったのだが、こうなると一転して、さらなる熟成を目指してまさに120点満点の芝居を創ろうではないか、いやいや150点くらいを目指さないと~てな意見も聞こえそうな空気。実は、少し後から知ったのだが、我々の本来の公演日程である7月30~31日以降の日程では、小屋のSTスポット横浜は、年明けまで一杯だった。ところがその中で唯一10月22~23日の日程だけがぽっかりと空いていたのだという。これって奇跡じゃないか?! そうだ神様が我々に下さった素敵なプレゼントなのだ。だからこそ我々は100点では満足しない。さらなる高みを目指す。乞うご期待!である
【文責:吉浜直樹】
Comentários